教職員の懲戒免職事案について、鹿児島県教育委員会が実名公表の規定を設けず、過去5年間11件すべてについて実名や所属先を公表していなかったことがわかりました。


 懲戒免職はすべて匿名公表で、校名も特定していません。生徒へのわいせつ行為で懲戒免職になった中学校教諭については、事実関係そのものすら公表していなかったといいます。
 また宮崎県でも、実名公表の規定そのものはあっても、実名公表の基準が「重大事件」とだけ記され、いくらでも曖昧な運用ができる状態になっているため、半数を非公表措置にしていたこともわかりました。
 読売新聞が九州と山口のあわせて9県を対象にした調査で判明しました。残る7県では「わいせつ事案など被害者のプライバシーに影響を及ぼす恐れがある場合」などの例外規定を設けながら、それ以外の事例について原則実名公表をおこなっています。
 鹿児島県教育委員会では「処分した教職員の学校が特定されると、生徒が就職などで差別される恐れもある」などとしています。
 生徒のことを考えているかのようにみえますが、実際は加害者を守っていることにほかなりません。加害者の学校が特定されたところで、何の関係もない生徒がなぜ不利益を受ける理由があるのでしょうか。
 特に生徒への暴力やわいせつなど人権侵害の場合は、事実関係が社会的に知られなかったことをいいことに、加害者がそしらぬ顔をして子どもと接触するような立場の職業に再就職したり、また子ども関係のボランティアなどに関与したりして、新たな犯罪被害を生み出している例などいくらでもあります。
  • 大阪市立小学校で臨時講師が児童へのわいせつ疑惑。発覚直後に退職し1ヶ月後に大阪府岸和田市の臨時講師として採用。岸和田市への採用の際には「前任者の復職で講師契約が切れた」と説明
  • 千葉県の小学校でわいせつ行為を繰り返した教諭が1986年に依願退職。その後当該者は前歴を知られないまま「家庭の事情で帰郷した」として宮崎県都城市立小学校の講師として採用され、児童へのわいせつ行為を繰り返して2004年摘発。有罪判決が確定。
  • 性犯罪を起こして有罪判決を受けた者が、事実を隠して教員免許が有効かのように装い教員に採用されていた事件が各地で発覚。

 子どもたちを守るためにも、特に生徒への暴力やわいせつ行為などについては、懲戒免職だけでなく軽微なものでも加害者の実名や所属先の公表は絶対に必要です。
(参考)
◎就職で差別って?教員免職でも氏名公表しない県(読売新聞 2011/2/20)
このエントリーをはてなブックマークに追加 編集