多くの児童・生徒が学校にいた時間帯に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、発生直後に保護者が迎えに来た児童・生徒は津波に巻き込まれた傾向がある一方で、校内にいた児童・生徒が助かった傾向があると指摘されています。


 毎日新聞(web版)2011年3月29日配信『東日本大震災:親子で津波の犠牲 児童引き渡しルール裏目』が指摘しています。
 学校保健安全法の施行により、小学校を中心に、災害時には保護者に子どもを迎えに来てもらうルールを整備する学校が増えたということです。記事によると、宮城県・岩手県の沿岸部の小学校で、児童・生徒の津波での被災と保護者が迎えに来たかどうかの相関関係をみたところ、地震発生直後に保護者が迎えに来て帰宅した児童・生徒は、保護者とともに津波に巻き込まれたケースが目立ったといいます。
 その一方で学校に残った児童・生徒は、学校から高台などに避難して大半が無事だったということです。毎日新聞の記事では細かい人数には触れられていませんが、『河北新報』2011年3月28日付『釜石市の小中9校 避難1800人全員無事』では岩手県釜石市のケースに触れています。同記事によると、釜石市沿岸部の小中学校計9校では、震災による児童・生徒の死亡者は当日欠席・早退や地震直後に保護者が迎えに来て帰宅した計5人にとどまり、学校から避難させた児童・生徒約1800人は全員無事だったといいます。
 今回の震災では、一部の例外はあるとはいえども、全体としてみれば学校から避難した児童・生徒の命が助かっている割合が高いことになります。記事では、発生直後に保護者が迎えに来て引き渡すマニュアルへの疑問を提起しています。
 災害の際に保護者が迎えに来て帰宅させるという従来のマニュアルが妥当だったのか、それとも不十分だったのかは、さらに検討を要する課題です。現時点では安易に断定できる段階ではありませんが、今回の大震災では、保護者が迎えに来たことが裏目に出たのではないかと思われるケースが目立っている形になっています。
 震災への対応としてはほかにもやらなければならないことが多岐にわたっていますが、この問題についても検証して教訓を導き出すことが必要になってくるでしょう。
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