文部科学省が3月30日に中学校教科書の検定結果を発表したことを受け、「子どもと教科書全国ネット21」など約40団体は連名で、「新しい歴史教科書をつくる会」やその亜流団体「日本教育再生機構」が発行した教科書2種類について、「歴史歪曲・侵略戦争美化・憲法敵視」などと指摘して2012年度以降の採択反対を訴えるアピールを発表しました。


 同団体などが出した『【共同アピール】歴史わい曲・侵略戦争肯定・憲法敵視、アジアの人々との共生を否定し、国際社会での孤立化の道に踏み出す「不適切な教科書」を子どもたちに渡してはならない』では、自由社・育鵬社の2社の教科書について、以下のように指摘しています。
 彼ら(引用注:「つくる会」とその亜流団体「日本教育再生機構」のこと)は、扶桑社・自由社以外の教科書には、「有害添加物=毒」が盛り込まれていると他社の教科書を誹謗・攻撃しています。彼らのいう「毒」とは、「反戦平和や護憲、核廃絶、アイヌや在日外国人への差別撤廃、環境保護」などで、これらは「特定の政治勢力の見解に加担する」ものであり、偏った教科書、「毒入り教科書」だと主張しています。しかし、これらの内容は憲法や国際社会の常識であり、人類にとって21世紀の重要な課題になっているものであり、中学生が学ぶべき大切な内容です。
 彼らの教科書は、こうした「当たり前」で大切な内容を取り上げない教科書だということです。

 現行教科書の内容や、「つくる会」などの主張などから総合すると、新教科書も従来の内容を踏襲していると考えられます。
 人権・民主主義・平和・憲法などを敵視する一方で、戦争と植民地支配の美化・正当化、天皇と支配者中心の歴史像、教育勅語礼賛、基本的な史実の誤りや偏った一方的な見方など、「つくる会」教科書の問題点はこれまでも繰り返し指摘されてきました。
 当然のことながらこのような教科書は、中学校の社会科の授業では全く使えない代物です。
 アピールでは2011年度中に全国で教科書採択がおこなわれる予定になっていることをふまえ、「つくる会」やその亜流による教科書を一切採択させない取り組みを強めることを訴えています。
今年は、このような教科書をゼロ採択に追い込み、1996年から15年も続いている「つくる会」などの第3次教科書攻撃、歴史わい曲・改憲の政治運動に終止符を打つ年にする必要があります。そのためには、①自由社版・扶桑社版が採択されている地域・学校で採択をやめさせる、②新たな地域・学校で自由社版も育鵬社版も採択させない、という取り組みを全国各地で展開することが求められています。
(中略)
 私たちは、今年こそ自由社版・育鵬社版教科書をゼロ採択に終わらせ、「つくる会」などによる教科書攻撃、教育破壊の政治運動に終止符をうち、憲法・47年教育基本法・子どもの権利条約の精神を活かした、真に子どものための教育の実現をめざす年にしましょう。2011年はその意味でも大きなチャンスの年になるように、全国の皆さんが地域から活動を展開するよう呼びかけるものです。

 アピールの趣旨には全面的に同感です。
 「つくる会」やその亜流は、2005年・2009年の教科書採択と同様、教科書採択のルールを踏みにじった強引な採択策動を強めていくことが予想されます。しかし「つくる会」の自由社版にしても、つくる会の主導権争いで内部分裂した結果誕生した亜流団体「日本教育再生機構」による育鵬社版にしても、きわめて危険な内容であり、1冊たりとも採択させない取り組みが重要になります。
(参考)
侵略美化教科書 採択に反対を 日韓41団体が訴え(しんぶん赤旗 2011/4/1)
【談話】2010年度中学教科書の検定結果について(子どもと教科書全国ネット21)
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