橋下徹次期大阪市長は、市長選で公約した学校選択制の導入に向け、保護者と意見交換をおこなう「区民会議」を24区ごとに設置する方針を示しました。


 12月5日に市教委幹部にその意向を伝えたということです。
 一方で大阪市教委は従来、学校選択制の導入には否定的でした。これには歴史的な背景があります。
 『大阪市史』によると、大阪市ではかつて越境通学が問題化していました。かつて大阪市の学校では教育予算が不十分だったことで地域の寄付に頼る部分もあり、地域の経済力によって学校設備に格差があったことや、受験競争の激化で受験に有利とされる学校への進学希望者が集中するなどして、特定の学校への越境通学希望者集中が問題化しました。そのことから1960年代から越境通学の根絶に取り組み、また学校間格差の解消を図ってきた歴史があります。そんな背景から、大阪市は越境通学には厳しい地域といわれます。
 一方で学校選択制は、いわば公認の越境通学制度とも言い換えることができるでしょう。
 地域で進学校とみなされている高校への進学者の多い学校、部活動強豪校など、いわゆる「有名校」や条件がよいとみなされる学校に進学希望者が集中して「人気校」となるのは、現在にも通じる問題です。学校選択制を実施している他地域でも、実際にそういった事例が多数報告されています。
 学校選択制については無制限におこなうと弊害ばかりが目立ちます。現行でも認められている例外的な越境通学措置にとどめておくべきです。
 また別の角度から見ると、「区民会議」は橋下流の一種の作戦ではないかという気がします。
 この人の民意のとらえ方はかなり独特です。選挙で勝ったから民意のすべて(しかし大阪市長選での得票率は6割、棄権者を含む全有権者比に至っては4割)と主張したりしている人です。
 「区民会議」で学校選択制支持の意見が出ると、学校選択制に批判的・懐疑的な意見が出ても存在自体を無視して、「区民会議で出されたから民意」と強行に主張するおそれがあります。しかも仮に都合が悪くなれば、「民意でこうなったのだから自己責任」と自分は「民意」のせいにして逃げるという逃げ道もしっかり確保しているようにみえるのは、深読みしすぎでしょうか。
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