橋下徹大阪市長は1月10日の大阪市会本会議で、道徳教育の監視機関を設置する方針を明らかにした。

 監視機関は第三者機関として、教育の専門家や法律家を想定ししているという。

 監視機関を導入する理由として橋下氏は、「教職員組合の価値観で道徳教育をおこなっている」として、「道徳は一番危ない。心理的なマインドコントロールになりかねず、政治から距離を置くべきだ」として、「君が代を立って歌うことについてぐちゃぐちゃ言うような道徳をやられたら、たまったもんじゃない」などとしたという。

 「教職員組合の価値観で道徳教育」自体が完全なでっちあげ。また「君が代を立って歌うことについてぐちゃぐちゃ言うような道徳」など、誰もしていない。「立って歌わないことについてぐちゃぐちゃ言って脅すような」君が代賛成派はいるが、君が代強制反対を主張する人たちは「立って歌いたくない人への強制は反対」であって、他人にも反対を強制したことはない。

 「道徳は一番危ない。心理的なマインドコントロールになりかねず、政治から距離を置くべきだ」は、この部分だけ切り取れば真実だろう。だからこそ、心理的なマインドコントロールを図って政治的介入を許すような、監視機関のようなものは不要である。

 「教育は2万%強制」と放言したこともある橋下氏。自分の価値観を強制するために、あたかも教職員組合こそが「自分の価値観を強制している」と投影して仮想敵に仕立て上げ、自分に有利な論を組み立てていると言わざるを得ない。

 道徳教育は本来、子どもが自ら内面を見つめて価値観を考えていく力を身につけさせるためのものである。特定の価値観を外から強制するものではない。

 橋下氏率いる「大阪維新の会」が出した教育基本条例案は、まともな教育関係者からは総スカンであったが、ごく一部に歓迎した「教育の専門家」もいた。産経新聞に寄稿するような、「つくる会」教科書支持、子どもや教職員に「日の丸・君が代」強制など特定の価値観強制などの、極右の自称「教育の専門家」のみが肯定的な見解を示していた。

 橋下氏好みの「教育の専門家」が、道徳教育にも介入し、個人の内面にまで介入することになるだろう。これはきわめて危険である。
(参考)
◎橋下大阪市長:道徳教育「監視機関を」…設置方針(毎日新聞 2012/1/12)
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