横浜市立高校での教科書採択の際、8校中4校で実教出版の日本史教科書の採択を内定したところ、市教科書取扱審議会が横やりを入れて採択を妨害し、他社教科書に差し替えさせていたことがわかった。


 実教出版の日本史教科書では、「新しい歴史教科書をつくる会」が教科書作成・採択をおこなっている動きについて記載されている。
実教出版『高校日本史A』(2012年3月検定、日A302 187ページ)
日本の侵略加害の事実を記述する教科書を「自虐的」と非難する立場の人々が執筆した教科書(7)が現れたことなどに対して、アジア諸国からも強い批判が起こった。
(7)この教科書は2001年、文部科学省による多くの検定意見にもとづく修正をへた上で検定に合格した。この教科書の採択をめぐって大きな市民運動がおこった。
※注釈番号の(7)は、原文では丸数字(機種依存文字のためweb引用にあたり技術的制約を考慮して当方で変更)

 この記述だけでなく、実教出版の教科書では戦争の問題や戦後の問題について、踏み込んだ記述が目立つ。太平洋戦争を「アジア太平洋戦争」と表記していること、軍国美談の類は批判的に紹介されていること、戦時中の国民生活や反戦の動きなども紹介していること、国旗国歌法で公務員に「日の丸・君が代」強制する動きがあることを紹介していることなど。
 これはすなわち、「つくる会」系教科書支持者にとっては著しく不都合で、難癖をつけそうな記述という事にもなる。
 横浜市では中学校教科書に「つくる会」系教科書が採択されていることから、中高の連続性・中学校で「つくる会」系教科書で学んだ生徒がショックを受けるなどをあげて実教出版の採択を否定する意見が出されたという。しかしそれをいうなら、中学校の教科書採択が誤りであることこそが問われなければならない。
(参考)
◎横浜市教委、教科書採択拒む 「つくる会」について記載(朝日新聞 2012/8/30)

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