岡山県立高校の教諭が、同僚教諭の「体罰」を岡山県教委に通報したところ、「通報の際に不適切行為があった」として県教委が逆に、この教諭に対して「関係者への名誉毀損」として処分を検討していることがわかった。処分は5月10日にも決定する予定だという。

岡山県教育委員会は、通報の際にこの教諭が、被害生徒の保護者や親族を名乗り、また「被害を誇張して通報した」ことを問題にしているという。これだけ見ると確かに不適切な部分はあるが、表面上の現象だけで判断してはいけない。

「体罰」自体は事実無根ではなく、運動部顧問教諭2人による「体罰」が確認され、加害者は厳重注意となった。

新聞報道によると、教諭は電話での通報の際に電話を受けた県教委事務局職員から「名前を言わないと通報を受理できない」と迫られ、とっさに被害生徒の姓を告げたという。教諭は自分の携帯電話から発信していて、県教委はナンバーディスプレイ機能で表示された番号から「犯人」を特定したという。

とっさに生徒の親族かのように名乗ったのは不適切だとはいえども、ことはそう単純なものではない。県教委による報復・見せしめの側面が強いという印象を受ける。

そもそも「体罰」事案では「通報が匿名か実名か」などどうでもよいことで、「事実関係や被害があったかどうか」こそが重要のはずである。「誇張や虚偽」などといっても、教育委員会の側が事案を認定しなかったということもありえる。

岡山県教委では、事務局にかかってきた「体罰」匿名通報電話について、ナンバーディスプレイ機能で表示された発信者の電話番号の持ち主を調べ、事件があったとされる学校側に番号の持ち主の住所氏名を通知していた事件が、4月に新聞報道された。(参考:当ブログ2013年4月3日『「体罰」匿名通報者の個人情報調べ学校に伝える:岡山県教委』)

今回の事件が先日報道された事案と同一なのかは新聞報道からは判断できないが、気に入らない通報だから逆恨みして、問題の根本にある「体罰」事案そのものへの対応はそこそこに、相手の「落ち度」をたまたま見つけたことをいいことに、まるで鬼の首を取ったかのように針小棒大に言い立てているとしか思えない。

「体罰」を見逃せないという正義感のある教員をつぶすようなことは、あってはならない。また「体罰」事案の通報について、実名でないと受け付けないとばかりに迫った岡山県教委の対応もおかしいし、同僚の不正を告発した人間に逆恨みや見せしめで不利益を与えるような対応もおかしい。

今回の処分検討の口実となっている「名誉毀損」など、言いがかりのレベルである。不法行為を起こした者やその支援者が、自分の不法行為を棚に上げて批判者や告発者を封じ込めるための居直り・口封じでしかない。

告発が加害者への「名誉毀損」などという寝言など本来どうでもいいことだし、それよりも内部告発に対して報復措置をとるようなことこそが重大な人権問題である。

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