下村博文文部科学大臣は7月25日、大学入試センターを視察し、「学力一辺倒でない人間力を判断する入試のあり方について議論していきたい」と大学入試改革に意欲を示した。


 もちろん現行の大学入試の方式が完璧というわけではないだろう。その一方で、入試に「人間力」を持ち込みたいというのはどういうことなのか。
 「人間力」といっても一面的な評価ができるものではない。同じ行為をしても、ある人には高く評価されても、別の人にはものすごく嫌われるということもある。
 「人間力」を入試判定の基準に持ち込むとなると、試験官の主観が入ることになり、恣意的な評価が可能となってくる。またさらに、あらかじめ特定の人間像を「理想」として評価することで、受験生はその「理想」に近づくべく、個性を殺してしまうことになりかねない。
 またこれは逆に言えば、入試基準が求める人間力評価に合わない人間に対して一方的に「無能」「異常者」のレッテルを貼り、大学や社会から排除することにもつながってしまう。
 下村文科相など自民党や保守派の文教議員を中心に、特定の主義主張を「道徳教育」として押し付けたいという動きもある。「人間力」入試では、そういう動きと結びつく危険性も高い。
 「人間力」を評価する入試制度は、現行とは比べ物にならないほど、著しい問題をはらんでいる。
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