佐賀県武雄市教育委員会は9月4日、全国学力テストの市立学校別成績を市のウェブサイトで公表した。

 各学校別の平均正答率と、市全体の平均、佐賀県の平均、全国平均を並べて記載する形となっている。

 文部科学省は、競争と序列化を防ぐとして、市町村に対しては学校名を明らかにした成績公表をしないよう求めてきた。しかし一方で、学校が自主的に公表することは差し支えないともしている。

 武雄市教委は「学校が自主的に公表したものを、市がまとめた形にすれば問題ない」という理屈で、今回の措置をおこなった。文部科学省はこのことについて、問題はないという見解を出した。

 そもそも全国学力テストの導入自体、各学校単位からの競争と序列化を図る考えから生まれたものである。導入構想の中で反対意見と懸念が強く出されたこともあり、文部科学省も表向きは「一人ひとりの到達度を見る」「平均点は都道府県別までしか公表しない」と言わざるを得なくなったものである。

 都道府県別成績公表でも、「自県の順位は何位」「自県は全国平均と比較して上か下か」の一面的視点にばかり焦点をあてた扱いが目立つ。これこそ「競争と序列化」そのものである。

 平均点は、受験者にとってはあまり意味のない数値である。しかし平均点だけがひとり歩きし、一度のテストで測定できる内容には限りがあるにもかかわらず平均点を学力のすべて扱いして、順位や「全国平均より上か下か」だけにこだわっても、本当の意味での学力を測ることにはつながらない。

 平均点だけがひとり歩きすることで、平均点が学校の価値や地域の価値とすり替えられて、人気校と不人気校が固定化したり、テストの成績一辺倒になった教育の歪みが生まれることになる。

 テストの平均点を上げる対策として、直前には予想問題の模擬試験を解かせる授業ばかりした例も報告されている。当日には試験官をつとめた教員が児童生徒に解答のヒントを出す不正すらあった。

 学校選択制と一体となった地域では、全国学力テストや地域独自の学力テストの成績が学校そのものの価値とすり替えられ、人気校と不人気校が固定化する現象も生まれている。

 ある県では、県独自の学力テストで、ある学校で「特定教科の学力テストの平均点が良くなかった」として、地域から教科担当教員が槍玉に挙げられて、追い出されるような形で転勤に追い込まれる状況も発生した。

 武雄市でも、そういう状況が生まれる危険性がある。全国学力テストの平均点公表は、危険なことだと言わざるを得ない。

(参考)
◎武雄市、学校別に公表 全国学力テスト成績(佐賀新聞 2013/9/5)
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