「日本学生支援機構」(旧日本育英会)の奨学金が返済できなくなり、利用者が奨学金返還訴訟を起こされる例が、8年間で100倍以上に激増したと産経新聞などが報じている。

 日本学生支援機構は日本育英会を独法化させ、2004年に発足した。政府の行政改革の中で奨学金は金融事業と位置づけられたこともあり、民間金融の手法を導入して回収が強化された。学費の値上げに伴って借入額が増えたことに加え、不況や非正規雇用の増加なども相まって滞納者が2倍以上に増加したことも、訴訟増加の背景にある。

 返還訴訟は2004年度は58件にすぎなかったが、2009年度に4233件に急増、その後も増え続けて2012年度は6193件となった。2004年度と2012年度を比較すると、訴訟件数は106.8倍にもなる。

 奨学金問題に詳しい弁護士などからは「貧困ビジネスのようだ」などとする厳しい指摘もある。

 諸外国では給付制が主流の奨学金制度であるが、日本の制度は「教育ローン」とも揶揄されるような貸与制が主流となっているという根本的なところから問題である。現行制度のもとでも困っている人には早期の救済策を検討していく一方で、奨学金制度そのもののあり方についても改善を図っていかなければならないといえるだろう。

(参考)
◎奨学金返還訴訟、8年で100倍 「厳しい取り立て、まるで貧困ビジネス」(産経新聞iza 2013/11/22)
◎奨学金を返済できず、重荷となっている若者が急増しています。(FNNニュース 2013/11/15)
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