神奈川県相模原市立相原中学校(相模原市緑区)で、柔道部の外部指導者が長年にわたって部員の生徒に暴力を繰り返していたことが、2013年秋に発覚した。この問題について神奈川新聞が追跡記事を出している。

記事は2014年1月13日付『相原中柔道部の外部指導者による体罰問題閉ざされた空間、温床に/神奈川』。

この中学校のある地域には柔道の道場「相武館吉田道場」があり、この道場が各地から生徒を集めて下宿させ、下宿生が同校に通学する形になっていた。道場の活動と結びつく形で柔道部が創設され、部の指導は道場関係者がおこない、部員のほとんどが道場からの下宿生だった。各地から生徒を集めた形になり、全国大会レベルの成績を残すようになって「強豪校」と言われるようになっていった。

しかし柔道部や道場では、指導者による暴力が横行していた。2009年に当時2年の男子生徒が指導者から平手打ちを受け、鼓膜を負傷した。学校側は2010年になって把握したが、道場側が再発防止を約束したとして指導委嘱は打ち切らなかった。

しかし2013年10月、情報提供をもとに相模原教委が調査を行った所、日常的な暴力が明らかになった。市教委は道場関係者の館長とコーチ(本業は神奈川県警警察官)の外部指導者2人を解任した。また全柔連も2人の指導者資格の停止処分を決めている。
以前に被害を受けた元生徒の保護者が、取材に応じている。

「今考えれば絶対に手放すべきではなかった」。かつて長男が相原中学校の柔道部に所属していた女性(48)には後悔しか残っていない。

長男は相原中入学と同時に親元を離れ、吉田道場で寮生活を始めた。稽古は夕方から夜9時まで。その後に夕飯を食べてシャワーを浴びるが、設置している数が限られているため、下級生の頃はほとんど入れなかったという。

「弱肉強食の世界。殴られ役になってしまったようだ」。長男は何があったのかは口にしないが、伝え聞いた話に驚いた。「稽古中の暴力は日常。試合でも2位では怒られ、殴られる。女子部員に絞め技をかけなければいけないとか、中学生にはショックな体験もあったみたい」

親が道場、寮を見る機会はほとんどなかった。保護者面談で相原中を訪れると、担任教師から「彼のためには辞めて帰ったほうがいい。見ていられない」と告げられることもあった。

長男は寮を3度逃げ出してきた。あるときははだしで帰ってきたこともあった。最後の「脱走」は中学2年の冬だった。それまでは「帰っておいで」と喉元まで出かかる言葉を押し殺し、道場に送り返していたが、もう気持ちを抑えられなかった。

長男は、転校後も地元の道場での支えもあって柔道を続け、大学進学の道も開けた。だが、失った時間は戻らない。「(道場を)辞めるときに、相原中の顧問に体罰のことを全部言った。だけど学校側は無力。『何もしてあげられない。ごめんね』と言われた」という。「(体罰問題が)明るみに出たことでほっとしている」。女性はしみじみと言った。


生徒や保護者の傷は深い。目先の大会で勝つためと称して暴力や絶対服従など、異常な世界である。別にこの道場に限ったことではないが、こういう運営をしているような体育会系の指導者は、カルトと言っても過言ではないかもしれない。

暴力での成績向上は錯覚であるし、カルト指導者とその取り巻きのの自己満足にしかならず、精神的にもマイナスの影響しかもたらさない。

こういう被害は、今すぐにでもなくしていかなければならない。そのためには、新聞記事で検証記事を発表するのも重要ではないだろうか。

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