日教組教研集会で性教育やジェンダー教育の実践が発表されたことに対して、産経新聞が「行き過ぎ」などとする記事を出している。

 「小1授業に裸のイラスト使用など行きすぎジェンダー教育 日教組教研集会」(産経新聞1月26日)と見出しを立てている。記事によると、イラストでの性教育の実践や、中学校でのジェンダー教育について、やり玉に挙げて攻撃している。

 授業実践は以下のようなものだったという。
 佐賀県の小学校教員は、小学1年生に行った性教育の実践リポートを提出。黒板に男女の裸のイラストを貼り、「性器」という言葉を踏まえながら男女の体について教える授業構成で、リポートによれば「教材がリアルだったので恥ずかしがったり笑ったりする子もいた」という。

 千葉県の中学校教員は男女平等をテーマに、童話「桃太郎」をパロディー化した文化祭の劇について報告した。桃から「桃太郎」と「桃子」の男女が生まれたという設定で、教員がリードする形で生徒に台本を作らせ、桃太郎に赤のランドセルを背負わせたり、桃子だけが鬼ケ島に行って「桃太郎が行かなかったことも男らしくないとかで責めないでください」と言わせたりする内容だ。


 特に何の問題も感じないものである。しかし産経新聞では、この後に「ジェンダー教育に詳しいジャーナリスト」を登場させ、小学校の教育実践は「性教育にはまだ早い」、中学校の教育実践は「日教組の『女性像』を押し付けている」と批判している。

 この批判は、産経新聞の論調ともそっくりそのまま重なるものだとみなして差し支えないだろう。

 2003年に発生した七生養護学校事件では、東京都の養護学校での性教育の実践に対して、知的障害児の発達段階に合わせて具体的な人形などの教材を工夫していたことが極右都議(当時)3人から目の敵にされ、「まるでアダルトショップのよう」などと一方的に吊るしあげられた。産経新聞は都議の側に立って攻撃キャンペーンに加勢するような記事を繰り返し出した。

 当時の教員らが起こした訴訟では、産経新聞の記事についての賠償責任こそ認められなかったものの、都議の教育介入を認定する判決が最高裁で確定している。

 今回の記事も、七生養護学校事件での論調とと似たような構図になっていると感じる。

 学校での教育内容については、子どもの実態に合わせて、現場の教員が創意工夫していくべき内容である。場合によっては教育研究者の助言や保護者の意見も反映させていくこともありうるし、具体的な進め方について意見の相違が出ることもありうる。ただ、授業実践についての意見の相違については、具体的な授業実践の枠内で検討を重ねることによって発展させていくという観点からの対応が重要である。教育実践が気に入らないからといって、外部から一方的に圧力をかけるようなやり方はなじまない。

 産経新聞の対応は、七生養護学校事件の時と変わっていないのだなと感じる記事である。
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