政府は、保育士不足の現状に対応するため、子育て経験のある主婦らを対象にした「准保育士」制度の創設などを含めた制度改革を検討していると報じられている。

 「准保育士」資格は、育児経験のある主婦らの受験を念頭に、通常の保育士試験よりも簡易な方法で資格取得できるよう想定しているという。また正規の保育士試験についても、現行の年1回の試験から、年複数回の試験の実施も検討しているという。

 保育士不足の現状への対応は急務である。試験の受験機会拡大はともかく、「准保育士」では事態を打開できないのではないだろうか。

 保育士が足りないとされる主な理由は、資格・職務の専門性と比較して待遇が著しく低い点にある。有資格者はそれなりにいるが、資格をとっても、学校卒業の時点で他職種を選んだり、保育士になっても機会を見つければ他業種へ転職する人が続出していることにある。

 待遇が低かったり保育条件が悪いと、事故誘発の遠因となったり、質の低い「モグリ」のような者も現れたりする。最近発覚したベビーシッターの事件も、保育をめぐる環境の劣悪さが遠因となっている。

 保育所増設・保育条件整備など保育の質の向上を総合的にとらえ、その一環として保育士の待遇改善を図っていくことが必要なのではないだろうか。それはすなわち、子どもの保育条件への改善にもつながる。

 「准保育士」が保育の質の向上につながるかは疑問である。非正規など安価な労働を前提にした制度設計になっているとも思える。また保育や教育には、自分の経験を絶対視するのではなく、客観的・科学的な分析をする視点も必要になってくる。自分の経験を絶対視して、自分の意に沿わなければ学問上の到達点や定説を無視してでもわめき立てる人物は、保育や教育の分野では珍しくない。

 今回の制度検討は、保育の専門性を低くみて、子育て経験のある主婦の片手間で適当に任せればいいという安易な発想のもとでの制度設計だから、余計に悪いことになる危険性がある。

(参考)
◎「准保育士」創設など検討(NHKニュース 2014/3/22)
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