大阪市生野区の大阪市立中学校の公募校長について、教育委員会事務局が2013年度末に更迭の方針を固めていたにもかかわらず一転して教育委員会会議で留任を決めた問題が起きている。この措置について、同校の保護者らが大阪市教委に対して同校長の更迭と経過説明を求める陳情書が、5月15日の大阪市会教育こども委員会で採択された。

 公明・自民・OSAKAみらい(民主系)・共産の野党4会派が賛成した。大阪維新の会は反対した。

 校長は2013年4月の着任以来、教職員や保護者と軋轢をおこし、パワハラ疑惑(市教委はパワハラと認定せず)で教頭が体調を崩して休職する事態となった。保護者らは校長の更迭を求めていた。ほかにも、修学旅行で生徒を悪ふざけで川に突き落とす、学校行事の記録などでもないのに不必要に生徒の写真を撮影して生徒が嫌がるなどの問題も指摘された。

 一方でこの学校については、「教職員の人事について、校内の選挙で候補者を推薦し、校長が追認していた」として、「校長の学校運営権を定めた学校教育法違反」などと逆に槍玉に挙げる状況も発生している。「学校教育法違反」という主張は一方的な解釈で言いがかりではあるが、この事案は留任を決定する要因の一つになったとみられている。

 2014年4月には、副校長職を新設した上でこの校長の留任が決まった。しかし保護者からの解任要求は止まらず、陳情書が提出された。

 市会教育こども委員会の質疑では、野党各会派とも市教委の対応に否定的な見解を示した。西崎照明市議(公明党)によると、この校長は「子どもが不安を覚えるような形で写真撮影し、保護者が写真データを見せてほしいと要求すると『私物なので応じられない』と発言」「生徒に対し『授業がつまらなければ、先生に1000円返してもらうように言いなさい』と発言」などの行動があったという。

 指摘が事実なら、呆れるような言動といわざるをえない。

 公募校長制度は橋下市政の肝いりで始まったものである。また教育委員についても、平松前市政時代からの委員の任期が切れるたびに「橋下色」の強い委員を選任している。こういった政治的事情は、校長が不自然に守られる一因となっているのではないのだろうか。

 政治主導で教育現場を動かすことで問題が起きるという実証例の一つが、この問題なのではないか。

(参考)
◎公募校長更迭から留任 説明求めた保護者の陳情書が採択(毎日放送 2014/5/16)
◎「橋下市長と意見交換を」公募校長の留任反対の保護者陳情、市議会委が採択 橋下市長は「決議には従わない」(産経新聞 2014/5/16)
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