『しんぶん赤旗』2014年5月21日付に『安倍流清明心って?道徳教科化“推進派”が重視するけど…』とする記事が掲載されている。安倍政権がすすめる道徳教育の教科化についての、藤田昌士・元立教大学教授(道徳教育)へのインタビュー記事である。

 道徳教育の教科化は、安倍内閣とともに、「道徳教育をすすめる有識者の会」が推進する勢力となっている。この会は各所で、教科道徳の中心は「清明心(せいめいしん)」だと表明している。赤旗記事では、この「清明心」は何を指すのかについて究明している。

 「道徳教育をすすめる有識者の会」は道徳教科書の先導版として、『13歳からの道徳教科書』『はじめての道徳教科書』(いずれも育鵬社)の市販本を編集・発行した。この書籍では、編集全体を貫く主徳は「清明心」と解説されている。

 藤田氏によると、「清明心」という言葉は『古事記』などにも登場し、神道の祓いに通じる古代日本の思想と解説している。一方で日中戦争のまっただ中の1937年に文部省が発行した『国体の本義』に「清明心」の言葉が登場し、当時の「国体明徴」運動の思想的主軸としてこの言葉が特別の意味をもたせられたことを指摘している。日本人は「天皇の臣民という類のない国民性をもつ」と宣伝され、清明心は「身を捨てて国に報ずる心」とされた。

 藤田氏は、道徳教科化を推進する勢力が「清明心」の意味を知らないはずはないだろうと指摘している。

 これでは、教育勅語の体制への回帰である。道徳教科化推進勢力は教育勅語体制への回帰を志向していることは他の角度からも度々指摘されてきたが、「清明心」を強調するという角度からも問題であるといえる。


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