神奈川県立高校の教科書採択の際、県教委が各高校に介入し、実教出版の日本史教科書の採択を妨害している問題に関連して、神奈川県の「公正な教科書採択を求める県民の会」が特定教科書排除をやめることや経緯調査を求める請願を提出し、7月22日の教育委員会会議で意見陳述をおこなった。

 同会の代表は、2013年度に続いて2014年度も県教委による介入・実教出版教科書の排除行為があったことを指摘した。

 副校長と教頭を対象にした5月14日の教育課程説明会で、県教委の高校教育指導課長が、実教出版の日本史教科書について「不採択にする、再考にならないよう候補にも載せないでもらいたい」と指示したことを、意見陳述の中で指摘した。各校の管理職が、教科書採択の資料の実教出版の欄に×印を記したり、「実教 日本史AB 候補も不可」と書き込んでいることが、県教委の指示を裏付ける証拠としている。

 一方で県教委事務局はこの請願の内容に対しての説明はおこなわず、県教委は「慎重に審議する必要がある」として継続審議とした。

 問題とされた実教出版の教科書は、基礎基本の内容を中心にした構成で、基礎的な内容がていねいに書き込まれている。大学受験を視野に入れたクラスで使用するには物足りない面があるかもしれないが、基礎基本を着実に理解する目的としてはかなり完成度が高い教科書である。

 この教科書が、国旗国歌法について「政府は強制は望ましくないとしたが、一部自治体では強制の動きがある」という趣旨の記述があることが、神奈川県教委など一部教育委員会や右派政治家から敵視されている主な理由となっている。

 客観的事実の記述にすぎないものだが、まるで事実に反する・政治的に偏っているかのように言い立てるのは、実際に入学式や卒業式で日の丸・君が代の強制をおこなっているという事実があり、この記述が不都合だからと推測される。実際、神奈川県教委を含め、実教出版の教科書採択の妨害・排除の動きが生まれた自治体(横浜市・東京都・大阪府・埼玉県など)では、入学式・卒業式での日の丸・君が代強制の動きが特に激しい地域である。

 どちらが事実に反して、政治的に「偏っている」のだろうか。

 教育委員会が介入して、担当教員や学校の選定をひっくり返したり、「採択の対象にはならない・学校が採択希望を出しても再検討させる」と宣言するなど、極めて異常事態である。こういう異常な介入はやめさせて、担当教員や学校の自主性が尊重されなければならない。
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