埼玉県立高校での教科書採択が、8月27日の県教育委員会で実施される見通しとなっている。各高校から出された教科書採択希望では、実教出版の日本史教科書を希望した学校は0校となっているものの、「採択を希望したのに、管理職の判断で別の教科書に変えられた」という声もあがっているという。

 実教出版の日本史教科書については、国旗国歌法での日の丸・君が代について「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という記述があることを理由に、一部教育委員会や右派議員が採択を敵視・妨害する動きが続いている。

 埼玉県では、2013年の教科書採択で実教出版を希望した学校があったことを受け、県議会の右派会派が教科書採択やり直しを求める決議を可決するなどの動きがあった。

 2015年度に使用予定の教科書を採択する、今年の教科書採択では、学校側に採択させない圧力がかかっていることが示唆されるような証言が紹介されている。
朝日新聞2014年8月26日『埼玉)実教出版の日本史教科書「選定ゼロ」に現場不満も』より

 ある県立高校の日本史担当教諭は「選んだら『決裁しない。問題になるから避けてほしい。もう一度選んで』と校長に言われた」と漏らす。「生徒に問題を投げかけるつくりになっていて工夫されている」ことなどから選んだ。別の教諭らとともに選び直す意思がないことを伝えたが、校長は別の教科書を選んだという。

 通常、教科書は教科担当教諭が選んで校内の選定委員会などで検討し、校長が決定する。教諭は「これまでのルールも無視され、教員としての思いを踏みにじられた」と憤る。

 別の県立高校の教諭は今回、特に注意深く教科書を読み比べて、「生徒に歴史を考えさせられる」ことなどから、選んだ。だが教頭や校長から選ばないように言われ、別の教科書になったという。教諭は「県議会で問題になったから管理職が『だめだ』とし、これから教壇に立つ先生たちが自主規制してしまう」と危惧する。一方、校長は県議会で問題になったことも踏まえ、「日本史Aの教科書を7冊全て読んだ。生徒の学力レベルにふさわしい教科書を選んだ」と話す。

 これらの複数の証言は明らかに、実教出版の教科書を採択させないための圧力であるといえる。管理職の言動の背景には県議会の圧力もあり、政治介入にもあたる行為でもある。
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