神奈川県大和市立小学校の女性教諭(当時。定年退職)が2008年度に児童に暴行を加えながら、保護者から「抗議」として逆に暴力や暴言などを受けて名誉を傷つけられたと主張して保護者を相手取って損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(遠藤真澄裁判長)が10月17日付で、教諭の児童への暴行を認めず、保護者の抗議は「人格攻撃による名誉毀損」として保護者に100万円の損害賠償を命じる不当判決を下していたことがわかった。

この教諭は2008年度に担任したクラスで、児童に対して「注意」として背中をたたくなどの暴行を加えた。保護者は「体罰」の件で、教諭や教育委員会に抗議した。教諭は保護者の抗議の際、「母親が教諭の頭をたたいたり、父親が暴言を吐くなどした。、そのことが原因で体調を崩して抑うつ状態になって休職を余儀なくされた」と主張した。

判決では教諭の「体罰」・暴力については「軽くたたく程度で、教育的指導の範囲内」などとして、教諭がこの児童をたたいたことは認めたものの「体罰」ではないと正当化した上で、保護者の攻撃を人格攻撃と断じた。

これは不当判決であろう。問題行動をおこなった教師が、自分の問題行動が明らかになると「自分への名誉毀損」と居直って騒ぐ事例は今でもよくあるが、その手の態度を正当化することにもつながりかねない。

発端は教諭の暴力である。教諭の主張が通じるとすれば、母親が教諭をたたいても「社会的に許されないことをした者への指導」として受忍すべきなのではないかということになってしまう。

発端となった「体罰」・暴力を正当化して、抗議を受ければ「人格攻撃を受けた」と針小棒大に言い立てて騒ぎ、自分の非を認めずに一方的な被害者面して相手を悪者に仕立て上げるような、こういう人物だから事態がこじれたとしか思えない。

また、本来なら「体罰」問題の解決に動くべきであり、また教諭を諌める立場にもある教育委員会は何をやっていたのだろうかという点も気になる。

類似の事件としては過去にもあった。小学校教諭が児童いじめをおこない、抗議した保護者を「モンスターペアレント」に仕立て上げて、ルポライターの名義で「事件はモンスターペアレントのでっちあげ」とする書籍を出版した事件(2003年)や、小学校で不適切指導をおこなった教諭が、抗議を受けると「保護者から中傷された」と保護者相手に恫喝訴訟を起こした事件(2010年発生。教諭側の敗訴確定)という事例が報じられた。この事件は、これらの事件と同じにおいを感じて、きわめて不快である。

(参考)
◎小学校教諭に抗議した保護者に賠償命令(日刊スポーツ 2014/10/23)
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