熊本県の私立開新高校で2007年7月、当時1年生の空手部員だった男子生徒が練習中に脳しんとうを発症したにもかかわらず、顧問教諭(41)が走り込みを強要するなどした末に倒れ意識不明の重体になった問題で、熊本区検が12月25日付で教諭を業務上過失傷害罪で略式起訴していたことがわかりました。

事件は2007年7月10日に発生しました。被害生徒は練習中に突きを受け、脳しんとうを発症しました。しかし教諭は事実関係を把握しながら走り込みをおこなわせるなどしました。

翌7月11日、生徒は体調不良を訴え、病院を受診したいと顧問に申し出ました。この際に教諭は生徒を突き飛ばすなどし、病院受診をさせずに練習参加を強要しようとしました。生徒は顧問とのやりとりの直後に倒れて意識不明になりましたが、顧問は救急車を呼ばずに放置し、約40分後に異変に気づいた別の学校職員が救急車を手配しました。

生徒は急性硬膜下血腫を発症し、重度の後遺症が残っているということです。このため退学と養護学校編入学を余儀なくされました。

生徒の保護者は2008年6月、教諭を業務上過失傷害と暴行の容疑で刑事告訴しました。暴行については2009年12月25日付で起訴猶予処分になっています。

事件の経過を改めて見直すと、きわめて悪質だといわざるを得ません。

その一方で、埼玉県立越谷総合技術高校柔道部重体事故(2002年7月)、東京都・専修大学付属高校バレーボール部死亡事故(2003年7月)兵庫県神戸市立御影中学校柔道部熱中症死亡事故(2005年8月)など、似たような事件・事故はこの事故以前にも多数発生しています。

また開新高校の事故以後にも、大分県立竹田高校剣道部熱中症死亡事故(2009年8月)など似たような事件・事故が発生しています。

いずれも「練習中の事故を顧問が把握している・もしくは体調不良を生徒が訴えているにもかかわらず、適切な措置をとらずに練習に参加させた(中には練習に参加させるために暴力を加えたものもある)。その結果症状が悪化し、死亡や意識不明の重体・重篤な後遺症発症など重大な結果を招いた」という点が共通しています。

過去に発生した事件の教訓をなぜ生かせないのでしょうか。

(参考)
◎熊本の高1重体、空手部長の教諭を略式起訴(読売新聞 2009/12/30)
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