茨城県土浦市立図書館所蔵の児童・生徒の文集について、土浦市教育委員会が「個人情報に当たる」として図書館に回収を求めていることがわかりました。図書館側は閲覧を差し止めて回収に応じるとしています。

 文集は市内の教員で作る研究会が発行し、優秀作に選ばれた児童・生徒の作文を掲載しています。作文には学校名・学年・氏名も掲載され、掲載には事前に保護者の同意をとっているということです。文集の一部は図書館に寄贈されたということです。

 毎日新聞が取材のため、図書館が所蔵していない文集の開示を土浦市教委に求めた際に、市教委は「個人情報」として拒否しました。その後市教委は、図書館に対して文集の撤去を求めたということです。

 このことについて市教委側は「文集は不特定多数に公開しているわけではない。内容は思想信条に値し、図書館に置くべきではなかった」としています。

 しかし市教委側の主張には、大きな疑問があります。文集は公開するのが前提で作成されています。微妙な個人情報については、通常は編集の段階でカットされます。文集公開が個人情報という主張には疑念が残ります。

 また「内容は思想信条に値し」という理屈で図書館の文集撤去を求めるのならば、世間に出回っている書籍自体が思想信条の表現物です。こんな理屈だと、図書館などいらないということになります。

 また図書館の蔵書に関して、外部からの圧力で取捨選択を左右されるということもあってはなりません。

 今回の措置は、市教委の主張や図書館への要請、図書館側の態度ともに、何重にも誤った措置だといえます。

(参考)
◎<文集>個人情報? 茨城・土浦市教委が図書館から回収(毎日新聞 2008/7/5)
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