10月24日の衆議院文教科学委員会で、石井郁子議員(日本共産党)が質問をおこないました。


 質問では、「新しい歴史教科書をつくる会」元理事(現在は同会から分かれた「日本教育再生機構」顧問)で、扶桑社版中学校社会科歴史的分野教科書「新しい歴史教科書」監修者の伊藤隆東大名誉教授の門下生や共同研究者が、教科書調査官や教科書検定調査審議会委員として教科書検定に深く関与していた事実を指摘しています。
 この事実はかねてから指摘され、2007年6月19日の衆議院沖縄北方特別委員会での川内博史議員(民主党)の質問でも取り上げられていますが、石井議員の質問によって改めて裏付けられた形になりました。
 質問によると、検定意見をまとめた文部科学省の日本史担当教科書調査官4人のうち2人、教科書調査官の意見を審議する検定審議会の「日本史小委員会」のうち近現代史担当の委員4人のうち2人が、それぞれ伊藤氏と共同研究の経験があるなど深いつながりがあるということです。
 石井氏によると、教科書調査官のうち、近現代史を担当する調査官二人はともに伊藤氏が一九七一年から東大文学部助教授をつとめていた時代の教え子であり、伊藤氏と共同の研究や著作があります。さらに、近現代史専門の審議委員四人のうち二人が、一九九七年度から二〇〇二年度まで伊藤氏が統括責任者をつとめる研究グループで共同研究をおこない、共同著作があります。
(『しんぶん赤旗』2007/10/25)

「集団自決」検定で検定意見の原案を作った調査官と、検定意見を付ける審議会委員が密接にかかわっている構図が浮かび上がり、検定制度の中立公平性が根底から問われそうだ。
 日本史小委のうち近現代史の委員は4人。うち伊藤氏と関係するのは広瀬順皓駿河台大学教授、有馬学九州大学教授。調査官は4人中、近現代を担当する村瀬信一、照沼康孝の2氏が関係する。
 1983年に伊藤氏と照沼氏は『陸軍畑俊6日誌』(みすず書房)を共編。90年に広瀬氏と伊藤氏が『牧野伸顕日記』(中央公論社)を共編で出版。93年には村瀬、照沼、有馬の3氏が『近代日本の政治構造』(吉川弘文館)を共同執筆した。
 97―98年の「日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究」、1999―2000年の「(同)具体化に関する研究」では伊藤、広瀬、有馬、村瀬の4氏が共同研究した。
(『琉球新報』2007/10/25)

 また問題の教科書調査官2人は、中学校社会科歴史的分野で「新しい歴史教科書をつくる会」の扶桑社版教科書の検定にも関与していたことが、石井議員の質問で指摘されています。
 渡海紀三朗文部大臣は検定は正当な手続きでおこなわれたという認識を示しながらも、調査官や審議委員の選定などには嫌疑をもたれないように透明性を高める必要があるという答弁をおこなったということです。
 今回の事実関係全体を見れば、検定に関わった文科省サイドの人脈面そのものからして、今回の教科書検定は政治的な思惑に基づいておこなわれたものであり、学術的に中立公正な立場でおこなわれた検定ではないという強い印象を受けます。
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