2017年12月19日の大阪府議会教育常任委員会では、一般的な生徒指導による校則のあり方について議題になった。

 大阪府立懐風館高校の生徒が「生まれつき茶色がかった髪を黒く染めるよう強要され、出席を禁じられ不登校になった」と訴えている訴訟が、大きな社会的反響を呼んでいる。

 この訴訟が報じられたことを受け、懐風館高校の訴訟の個別の事例ではなく、高校での生徒指導・頭髪指導の一般論として、質疑がおこなわれた。

 大阪府教育庁が府立高校での頭髪指導の実態について調査した結果を報告した。大阪府の担当者は、頭髪指導については「地毛の確認方法などについては、生徒や保護者の納得感が一番重要」などとする見解を示した。

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 報告を受け、維新・自民・共産の各会派の議員が、校則問題に関する質疑をおこなった。

 今西和貴かずき府議(自民党)は「生徒や保護者の納得感」とは、もっと具体的に何を指すのかと質問した。教育庁の担当者は「地毛が黒くない生徒は頭髪違反としては指導しない。それを確認している。確認方法は文章提示や口頭申告など、学校の実情に応じて個別に検討している。納得できる方法で行うように指示している」とした。

 校則や学校の指導が原因で不登校になった場合の対処については、大阪府は「学校は児童生徒の心身発達、集団生活の場」として理解していただくことが重要とした上で、家庭訪問やスクールカウンセラーなどの学習支援をおこなうとした。

 石川多枝府議(共産党)は、「地毛といっても概念は難しい。子どもの髪の色や質は成長によっても変わる。運動部の生徒が日光で髪の色が変わったり、水泳部の生徒が塩素で髪の色が茶色くなることもある」などと、美容師からの聴き取りを元に指摘した。

 また「生徒たちに話を聞いた範囲では、頭髪については、高校の合格者説明会や入学説明会では保護者への説明はほとんどされないまま、地毛証明書の提出を求めている」「書類を出したにもかかわらず染めていると言われた子どもがいる」「水泳部にいたと説明しても、髪の色はすぐに元に戻ると画一的な指導がおこなわれたという話を聞いた」などの話を紹介し、画一的な指導をすべきではないと指摘した。

 笹川理府議(維新)は、「生徒指導には様々な配慮が必要。一律にやっていくのはダメ。そういう一律的な指導の典型が地毛証明書」などと指摘した。一方で「茶髪証明書を出させるなら全員に出させればいいのではないか」とも発言した。

 笹川府議や永井公大府議(維新)は、校則は事前に公開して生徒が入学前に選べるようにすべきなどとも言及した。これは文脈によっては「学校の校則は、たとえ理不尽でも無条件に肯定して、その学校を選択した生徒の自己責任論に押し込める」とも受け取れる見解にもなりかねず、引っかかった。

 行きすぎた頭髪指導や校則指導を疑問視すると受け取れる立場からの質疑が多かったが、大阪府の側は、地毛証明書などについては「各学校の対応。自主的な判断」とするにとどめているような印象を受けた。

 もっとも個別の事例とは完全に切り離した一般論でいえば、一律に校則や決まりごとを指定するのではなく、生徒の実情に応じて各学校ごとに具体化していくという視点は重要にはなってくる。その一方で、決まりを作る・守らせることそのものが目的となり、子どもの人権を抑圧・侵害するなど社会通念に反したものを一方的に押しつける形になってはいけないという、別の視点からの問題もある。

 憲法や子どもの権利条約などの理念をベースにしながら、子どもの人権を尊重する形で、改善すべき点は改善を図っていく必要がある。
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