仙台市立南中山中学校(泉区)2年だった男子生徒が2016年2月に自殺し、背景にいじめがあったと指摘された問題で、仙台市は2月17日に第6回いじめ問題再調査委員会を開いた。しかし委員間で激しい応酬があり、これ以上の議事継続は困難としてこの日の議事は打ち切られた。

 このいじめ自殺事件については、学校側は生徒からのいじめ訴えを把握していながら十分に対応しなかったことが指摘されている。さらに生徒の自殺直後、教員が同級生宅を訪問し、自殺した生徒がいじめを訴えている内容のLINEを削除するよう求める隠蔽工作をおこなったことが判明している。

 発端は1月20日に開かれた第5回いじめ問題再調査委員会にさかのぼる。この日の席上、遺族側推薦委員の野田正彰氏(精神科医)が、いじめ調査の答申書を説明するために出席した教育長に対して「あなたたちが(男子生徒を)殺したんだよ」と批判する発言をおこなっていた。

 2月17日の第6回委員会で、村松敦子委員長(弁護士)が野田氏に対して、前回委員会での発言について「相手を困惑させ、威嚇し、侮辱する発言は自重してほしい」と発言した。この発言を引き金に、野田氏は「(村松氏は)決めたことを実行せず、うそばかりついている」などと村松氏の言動を激しく批判したという。

 激しいやりとりになった末、村松氏が「これ以上の議事進行は困難」として議事の打ち切りを提案した。他の委員からは、打ち切りに賛否両論の意見が出たが、村松氏は最終的に委員長職権で議事を打ち切った。

 野田氏は、委員の進退については「郡和子仙台市長に判断してほしい」とする意向を示した。委員の解任・再選任に至った場合は、再調査も大幅に遅れることになるとみられている。

 遺族は野田氏の発言について、マスコミ取材に対して「一般の人には暴言に聞こえても、遺族の気持ちを代弁してくれた」という感想を述べたという。

 確かに、いじめ自殺事件に対して「教育委員会・学校関係者が生徒を殺した」は、事情を知らない人には一見すると暴言と聞こえるのかもしれない。しかしその一方で、「殺した」という具体的な単語の選定が適切なのかという評価・是非はともかくとしても、それに類するような批判をするに値する根拠はあるのではないかとも心情的には感じる。

 調査委員会が、遺族側の心情に立った調査をおこなっていたのかということも問われているのではないか。

(参考)
◎発言応酬で議事打ち切り いじめ再調査委員会、空中分解も(河北新報)
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