文部科学省は3月29日、全国の公立高校で2015~16年度の2年間に、妊娠を理由に学校側の勧めで自主退学した女子生徒が32人いたとする調査結果を発表した。

 文部科学省は都道府県教育委員会に対して、安易に退学処分や退学勧告などをしないよう求める通知を出した。

調査の背景



 妊娠を理由にした退学者数の統計は、これまでは集計されていなかった。しかし2015年、京都府で妊娠中の女子生徒に対して、体育の授業に出席するよう求め、代替措置なども認めなかった事例が新聞報道されたことなどから、文科省が全国的な実態把握をおこなった。

 今回の調査によると、学校側が妊娠を把握した生徒は、全体で2098人いた。うち674人が自主退学を選択している。674人中32人が学校のすすめによる自主退学だった。32人のうちの半数以上は、引き続きの通学ないしは休学・転学を希望していたという。

 妊娠を理由にした退学処分の事例はゼロだった。

必要な体制の構築を



 10代での妊娠・出産により、また高校を卒業できなかったことによって、安定した仕事に就くことが困難になって、貧困状態に陥るリスクが高まり、貧困の連鎖につながる危険性が高まると指摘されている。

 その意味でも、生徒が学び続けられるような体制を整えていくことが求められているのではないか。

 さらには、望まない妊娠を防ぐためにも、保健の授業をはじめ、家庭科など他教科の授業、総合学習や特別活動など学校教育のあらゆる機会で、性教育やその周辺領域に関する内容も充実させていく必要があるのではないかといえる。

 先日、性教育を敵視するような議会質問をおこなって問題になった都議の言動がマスコミ報道されたが、そういう性教育敵視では望まない妊娠などにもつながり、また貧困の連鎖を生み出す危険性がある。

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 もっとも、学校教育の枠内だけで抱え込めるようなものではない。社会全体の問題として、医療・社会福祉などの分野とも連携をとりながら、よりよい支援体制を構築していくことが求められているのではないか。
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