和歌山市で「ツタヤ図書館」が計画されている問題。

 ツタヤの運営会社「CCC」を指定管理者として選定した過程について、和歌山市在住の弁護士が法的な疑問点を指摘するブログを書いた。それに対して「ツタヤ図書館」賛成派の市議が、ブログの内容に反論し「問題はない」とする議会発言をおこなったという。

 週プレニュース(ウェブ版)2018年4月2日配信『火種くすぶる和歌山市・ツタヤ図書館騒動の新疑惑ーー教育委員会「秘密会」での承認は有効か?』が、顛末を記事にしている。

騒動の顛末



 記事によると、この間の経過は概略、以下のようになっている。

 金原徹雄弁護士は2018年2月19日、『CCCを和歌山市民図書館の指定管理者に指定した行政処分は無効かもしれない』とするブログ記事を発表した。

 ブログ記事によると、図書館の指定管理者を選定するプロセスについて、指定管理者選考に関する選定委員会の答申を受けて教育委員会が指定管理者候補を内定した上で、議会の議決を経る必要があるが、選定委員会の答申を受けての教育委員会は開催されていない、教育委員会に関する手続きを飛ばして選定委員会から議会にかけたのは手続き上問題があるのではないかと疑問を呈している。

 一方で、「ツタヤ図書館」推進派の松井紀博市議は2018年3月19日の市議会文教経済委員会で、「2017年11月9日の教育委員会定例会で、教育長が臨時代理をする承認を得ている」として、金原氏のブログの内容は当たらないとする批判・反論をおこなった。松井市議によると、同日の教育委員会定例会は「秘密会」扱いで、その経過を金原弁護士が知らなかったために起きた誤解ではないかとしている。

疑問点



 和歌山市教育委員会の規定では、教育委員会の議決が必要な事項について、緊急やむをえない理由がある場合には、教育長が臨時代理で決裁することができるという規定が設けられている。

 規定としては一見すると「有効」に見えるかもしれない。

 しかしその一方で、「緊急やむをえない理由」とする規定が曖昧ではないか、何をもって「緊急やむをえない理由」と判断したのかという点については、はっきりしていないとも指摘されている。

 週プレの記事では、図書館関係者の話として、「市議会の議決が絡むもの、しかも億単位の予算を要するものを、教育長の代理決裁で通すのは一般的には考えられない」とする内容も指摘している。また、教育長の臨時代理権まで行使してまで秘密裏に進めたのは、「ツタヤ図書館」への悪評・批判をおそれていたのではないかと指摘する声も、記事で紹介されている。

 CCCを指定管理者とする「ツタヤ図書館」は、全国各地で市民から批判や疑問が呈されている。郷土史資料を廃棄する、ツタヤの在庫を押しつけるような形で「10年前のパソコン操作マニュアル本や資格試験の参考書」「図書館所在地からみて遠方のラーメン店ガイド」など首などをかしげるような内容の書籍を大量購入、蔵書も独自分類で混乱を招く、絵本が子どもの手に取れない高い位置に飾られている、装飾優先で吹き抜けの本棚に飾る目的だけの「ダミー本」を大量購入、などの事例が多数報告されている。

 和歌山市での市当局・教育委員会の動きについては、形式的な手続きの上では合法に見えるのかもしれないが、かなり強引な手法だとも感じる。

 一般的な手続き論でいえば、疑問や異論が出そうだから封じ込めるという手法ではなく、推進する側が本当に「よいもの」だと思っているのならば、それこそ誤解を解くためによりていねいに進めていくべきものではないのだろうか。疑問点や異論・批判が広がらないように秘密裏に、強引な方法で進めるということ自体に、疑問を感じる。
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