大阪府立高校の生徒指導主事や校長などで作る「大阪府高等学校生活指導研究会」(生指研)が、2018年度の夏季研修会として「防衛省・自衛隊の概要」「自衛隊における隊員指導の心得」の2つの内容で、自衛隊関係者による講演を企画していることがわかった。

 このことについて大阪府立高等学校教職員組合(府高教)が、企画内容を批判し内容の見直しを求める見解を出した。

批判見解の概要



 2018年5月22日付で、生徒指導担当者や関係教職員を参加対象とした夏季研修会に関する通知が、各府立高校に向けて出された。通知が出されたことを把握した府高教は、2018年5月30日付で批判見解を出した。

http://www.fukokyo.org/message/1311

 生指研は、すべての府立高校の生徒指導主事や校長などを会員とする。活動への参加は服務上「出張」扱いとなり、また活動方針を決める総会には府教委も参加して指導・助言をおこなっているという。

 府高教は、研修会の見直しを求める理由として、以下の3つの内容を挙げている。


  • 法律学者が違憲性を指摘し国民世論が大きく分かれるものを、生指研に持ち込むのはふさわしくない。


  • 自衛隊の組織原理・隊員指導は、学校での子どもを主体にした教育活動の一環としての生活指導とは相容れず、役立たない。

  • 研修内容の決定に関して、研究会での決定手続きに問題点があると指摘されている。



私見


 私見では、府高教が示した3点の批判内容は、いずれも重大な内容だという印象を受ける。

 とりわけ、学校での生徒指導の研修として、組織原理が全く異なる自衛隊のやり方を持ち込むのはいかがなものかという点について、特に強く問題を感じる。

 自衛隊については、命令と指揮系統がはっきりしている・通常の組織と比しても厳格に運用されているという組織上の特徴がある。一方で学校での生徒指導については、教師から生徒への命令・指揮の関係や上下関係ではなく、生徒の納得と自主性をもっておこなわれることが鉄則である。

 組織運営として、自衛隊と学校とでは全く異なる特徴を持っている。自衛隊の隊員教育のやり方をそのまま学校に持ち込んでしまうと、学校での生徒指導のやり方とは矛盾が出る部分が多く、都合が悪いことになる。

 となれば、なぜこのようなものを学校に持ち込むのかということが問われることにもなる。学校の生徒指導についても、教師から生徒への命令・指揮の関係や、教師と生徒との上下関係に変質させたいのかとも疑われることになる。

 この講演企画では、生徒指導の内容の研修や教師の指導力向上に資するものではなく、別の目的があるのではないかという気がしてならない。
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