知的障害児を対象とした特別支援学校・東京都立永福学園(杉並区)で2017年8月、バスケットボール部の部活動中に高等部1年の生徒が熱中症で倒れた事故が発生した。

 東京都教育委員会は7月20日、この生徒にランニングを命じたのは「体罰」にあたるとして、当時顧問教諭だった男性教諭2人(32歳と33歳)をそれぞれ、停職1ヶ月の懲戒処分にした。

事故の経過



 事故は2017年8月23日に発生した。

 顧問の1人は事故2日前の8月21日、部員に対して、校舎外周(1周約450メートル)を規定時間内に走るよう指示した。その際、規定時間を超過した生徒については、超えた分を追加で走らせる罰を科した。

 生徒は43周を追加で走らされることになった。その日は途中の21周目で終了したものの、事故当日の午後から残りを走ることになった。

 指示を出したのとは別の顧問教諭が途中まで様子を見ていたものの、別の生徒の練習を見るとして体育館に移動した。生徒は一人で走っていたが、午後4時頃に校内で倒れているところを発見され、救急搬送された。

 生徒は熱中症による脱水症状で一時意識不明の重体になったが、その後回復したという。

 気象庁の記録によると、事故のあった時間帯、東京都心部(千代田区)で約32度、練馬区で約33度を観測している。

 東京都教育委員会では、気温が高い中、通常の運動量を大きく超えるような運動を「罰」として命じたことなどが「体罰」に当たるとした。

私見



 折しも、処分が出た2018年7月20日は、猛暑日が数日前から何日も続く地点が全国的に多発するなどの異常気象によって、熱中症の発症や対策が社会問題化している状況である。とりわけ学校ではエアコンがない場合があることも相まって、児童生徒の救急搬送が相次いでいる状況となっている。文部科学省が学校に対して熱中症への注意を呼びかける通達を出したり、スポーツ庁が部活動の際には熱中症への対策をとるよう求める通達を出すなどの非常事態となっている。

 この事故については1年前のものであり、処分がこのタイミングになったのは偶然ではある。とはいえども、熱中症に対する学校側の対応を考える上で、一つの方向性を示しているものだといえる。

 ペナルティ・罰としてランニングを科すような「指導」、しかも真夏の高温の条件下で激しい運動をさせて、熱中症を誘発させて重大な事態を招くなど、決してあってはならないことである。このような「指導」と称した行為は、「体罰」であり虐待であるということを示し、再発防止のために厳しく対応していくことが重要だといえる。

(参考)
◎部活動ランニングで脱水症状 “体罰にあたる” 教諭2人処分(NHKニュース 2018/7/20)
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