吉村洋文大阪市長は8月30日の記者会見で、大阪市立高校全20校を府に移管したいとする意向を表明した。

https://youtu.be/u8UidyvRLRI?t=27m27s

 大阪府・大阪市では維新政治のもと、橋下徹大阪市長時代の2013年にも、維新が「大阪都構想」と呼ぶところの大阪市の廃止・解体策動に絡んで、「二重行政解消」と称して同様の方針が出されていた。そのときは具体的な移管策がまとまらずに、宙に浮いた経緯がある。

 今回改めて方針が出されたことになる。今後、大阪府・大阪市の教育委員会での協議を経て、議会に関連条例案を提出したいとしている。

「大阪都構想」に絡んでやり玉に



 公立高校については、大阪府立と大阪市立がそれぞれあっても「二重行政」ではなければ、特に支障があったわけでもない。そもそも、それぞれの必要性に応じて設置された経緯がある。

 1900年の「大阪府教育十カ年計画」によって、大阪府立の中等教育諸学校は普通教育(旧制中学校・高等女学校)を中心に、大阪市立の中等教育諸学校は実業教育(主に商業教育)を中心におこなうという役割分担ができた。その後の1920~30年代には、旧制中学校や高等女学校の入学希望者が急増したことを踏まえて、大阪市立でも普通教育学校を作ることになった。そして1948年の学制改革による新制高等学校への移行・改編でも、大阪府立と大阪市立の高校がそれぞれできた経緯となっている。大阪市立の高校では1980年代以降、特色化を進めてきた。

 大阪府立と大阪市立の高校があっても、入学試験に関する内容などは、大阪府と大阪市・他の市立高校を設置している市(堺市・東大阪市・岸和田市)の教育委員会との間で協議をおこない、共通の内容でおこなっている。これまで、問題が起きていたということは全くなかった。

 しかし「維新政治」になり、「大阪都構想」と称して大阪市を廃止・解体するために、「大阪府と大阪市が同種の施設を持っているのは二重行政だ」という言いがかりが、各分野の施設に対してつけられるようになった。体育館、公立病院、公立大学、特別支援学校といった施設が、これまでやり玉に挙げられてきた。公立高校についても、再びやり玉に挙げられたことになる。

教育上の必要性から出たものではない



 この移管構想は、大阪市の廃止・解体を目指すという「維新政治」の政治的な策動からのものである。

 学校関係者からの要望があったわけではない。政治的意向だけで押しつけられたものである。移管の必要はないといえる。
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