森友学園問題で、国有地を学園側に売却した際の額が非開示になっていた問題。

 この問題について、国が非開示にしていたことは違法だとして、木村真・大阪府豊中市議(無所属)が国を相手取って訴えていた訴訟で、大阪地裁は9月25日、売却交渉の実務を担当した池田靖・財務省近畿財務局職員(管財総括第3課長)の証人尋問を認めた。

国有地売却の不透明な経過



 森友学園問題は、原則として公開されることになる国有地の売却額が、なぜか非公開にされ、それに気づいた市民やマスコミらの情報開示請求にも非公開を貫いたことといった、国有地の不審な取引が発覚の発端となっている。

 2017年2月に木村市議が売却額開示を求める訴訟を起こし、また提訴と前後して『朝日新聞』が「財務省は非公開にしているが、周辺の状況を総合的に勘案すると、相場よりも大幅に値引きして売却したことが強くうかがわれる」と不審な土地取引を報じたことで、一連の森友学園問題が明るみに出た。

 他社マスコミも後追い報道をおこなって社会問題化すると、国は売却額については開示をおこない、相場よりも大きく値引きしたことを認めた。

 値引きでの売却の理由については、「ゴミが埋まっていることが判明した。本来なら国の責任でゴミを除去した上で売却するが、学園側が早期開校を望んでいることなどから、学園側がゴミ除去をおこなうとして、国としてはゴミ除去費用相当額約8億円を差し引いて学園側に売却した」とした。しかし8億円相当のゴミが埋まっていたということは疑問、先に8億円の値引きありきで後付けで逆算されたのではないかという新たな疑惑が指摘された。

 また当該の大阪府豊中市の国有地については、森友学園以前にも、別の学校法人(大阪音楽大学だとされている)が学校用地としての購入を希望したが、国から提示された価格が高すぎて購入を断念したことが指摘されている。また別の学校法人以前にも、豊中市が当該土地について、防災公園としての購入を希望していたが、価格が高すぎて断念した経緯もある。

 他の購入希望者には8億円以上相当として売却額を提示し、交渉が決裂した土地を、なぜ森友学園には1億円を少し上回るような破格の安さで売却したのかという疑問が出る。

土地取引の背景



 背後には、国・安倍政権、大阪府・維新府政、森友学園・籠池泰典前理事長の3者の関係があるのではないかともいわれている。

 森友学園は、経営する幼稚園で、教育勅語暗唱など特異な極右的教育をおこなうとして問題になっていた。森友学園理事長だった籠池氏は、教育勅語の理念に基づく教育をおこなう、系列小学校の開校を構想していた。

 第一次安倍政権での「教育基本法改正」(2006年末)を受け、2007年頃より籠池氏の小学校設置構想が具体化し、大阪府の担当部局と水面下で打ち合わせなどをおこなっていた。

 当時大阪府知事だった橋下徹は「規制緩和」として、2011年夏に大阪府での私立小学校への参入基準のハードルを下げるよう指示し、松井一郎大阪府知事になった後の2012年4月より新基準が実施された。維新府政のもとで、籠池氏の小学校設置参入を促すような基準ができたことになる。

 また、2012年2月26日には「日本教育再生機構・大阪」の主催で、大阪市内で教育再生シンポジウムがおこなわれた。当時1期目の首相を退任して一衆議院議員になっていた安倍晋三氏と松井一郎大阪府知事がパネリストとなった。八木秀次・日本教育再生会議理事長がコーディネーターを、遠藤敬衆議院議員(維新)が司会を、それぞれ務めた。安倍氏は大阪府での「教育改革」を、自分がしたくできなかった方向性として褒め称える発言をおこなった。このシンポジウムは、安倍氏と松井知事・維新サイドが、極右的な「教育改革」で意気投合するきっかけとなったと指摘されている。

 維新サイドと安倍首相サイドは、「教育改革」のみならず、いわゆるネトウヨ的・ネオリベ的な政策全般について歩調を合わせている。

 籠池氏は安倍晋三首相に心酔し、安倍昭恵・首相夫人に小学校の名誉校長を依頼するなどした。

 当時、籠池氏・維新・安倍氏の利害関係が、極右的な「教育改革」で一致していたことになる。維新府政のもとでの大阪府では、担当部署の私学課が松井知事の意向を受け、森友学園の小学校開校に異例の便宜を図る形になった。そして、財政面でも不安が指摘されている、教育内容も極端だと指摘されたにもかかわらず、大阪府の事務方主導で条件付きながら、私学審議会で森友学園の小学校設置を「認可相当」とした。

 学校敷地については、大阪府の動きと連動する形で、「大阪府で学校設置認可が出る」ということを前提条件に、国有地を借地・のち売却する話へと進んでいた。近畿財務局と大阪府私学課の担当者が頻繁に打ち合わせをしていたとも指摘された。

 土地売買問題は国と森友学園との関係であり、直接的には国政問題ではある。一方で大阪府の学校設置認可を前提に土地取引が進んだ、大阪府の認可過程そのものにも問題があったと指摘されたことで、大阪府政の問題とも切り離せないということになる。

事実関係の解明を



 これらの問題については、国会や大阪府議会でもそれぞれ追及されている。

 しかしある程度まで新事実が発覚したものの、問題の核心については十分に解明しているとはいいがたい状態になっている。国でも大阪府でも、同じような議論が繰り返されている状態で、状況が決定的に前に進んでいるとはいいにくい状況になっている。

 普通に考えれば、担当者の独断で、特定の相手に対してのみ土地を大幅に値引きしたり、売却額を非公開にすることなど考えにくい。近畿財務局の担当者が裁判で証人尋問をおこなうことによって、なぜそのような異例のことが発生したのか、背後には何があったのかについて、少しでも明らかにされることを願う。
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