沖縄県豊見城とみぐすく市立小学校4年だった男子児童が2015年に自殺した問題で、児童の両親は10月12日、「いじめが原因の自殺。いじめを把握しながら対策を怠った学校側にも責任がある」などとして、加害児童の保護者5人と豊見城市を相手取り、約7800万円の損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こした。

いじめの概要



 児童は2015年10月12日に自宅で自殺を図り、同19日に死亡した。

 豊見城市の第三者委員会の報告書(2018年3月30日)によると、本件事案の概略はおおむね以下のようである。

http://www.city.tomigusuku.okinawa.jp/education_sport/33/133/9198

 児童は4年時の2015年5月頃から、「ズボンを下ろされる」「持ち物が隠される」「事実無根の噂を流される」「『かっこつけるな』と言いがかりを付けられて服を引っぱられる」など、いじめを受けているような兆候が見られたという。担任教諭もこの児童へのいじめに気づき、断続的に指導をおこなっていたが、指導の効果は思わしくなく、保護者との情報共有もしていなかった。

 児童は、2015年9月29日に実施されたいじめアンケートで「いじめられている」と回答していた。同級生の名前を挙げ「いじわるされたりぬすまれたりしていやになっててんこうをしようかなと思っている」と訴えていた。

 また児童が自殺を図った後に市教委が同級生に対して実施した調査では、この児童が複数の同級生から「後ろから突き飛ばされた」「たたかれていた」などの目撃証言や、「『通っていた英語塾で同級生から意地悪をされていて、塾に行きたくない』と訴えていたのを聞いた」などの証言が寄せられた。

 第三者委員会では、児童の自殺の原因は、本人の感受性の強い性格、直前に宿題の提出が滞るようになっていたことなどの学業不振、直前に習い事のエイサー(沖縄県の伝統芸能)を退団していた喪失感などの複合的な要因が考えられるとしながらも、「自死に向かわせた大きな要因の一つにいじめがあることは、証拠と経験則に照らして明らかというべき」と、いじめと自殺との因果関係を認定した。学校側が適切な判断をしていれば自殺は防げたとした。

 死亡した児童と保護者との親子関係は、おおむね良好とされると判断した。一方で、死亡した児童や保護者に対して、「家庭で虐待があった」「母親が勤務先で、いじめ加害者と名指しされた同級生の母親でもある同僚に対して、いじめ・パワハラ行為をおこなっていた」などの事実無根の噂が流れたという。

原告側の主張



 原告側は提訴に際して、以下のように指摘している。

 代理人弁護士によると、両親側は男児が自殺する前、学校側のアンケートにいじめを受けたとする回答をしたことで、学校はいじめの実態を認識したにもかかわらず、適切な対策をしないまま放置したと指摘し、学校は自殺を防ぐための対策を怠った注意義務違反があったと訴える。

 さらに学校や市教委は「児童は両親から虐待されていた」といった虚偽の情報を信じ、自殺が発覚した後も法律で定められた調査を十分に行わなかったなどと主張する。

(『小4自殺きょう提訴 豊見城市 両親「学校がいじめ放置」』 琉球新報2018年10月12日 )


 確かに第三者委員会の報告書を読む限り、学校側の対応が後手に回っていたという印象を受ける。訴訟の形になるが、より詳細に事実関係を解明した上で、同種事例に対して適切な対応を取れるようにしていく必要がある。
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