東京都町田市議会の文教社会委員会で12月12日、中学校給食に関する請願が審議された。

 配送方式・選択弁当方式となっている中学校給食を、小学校と同様の全員給食方式にする請願が2万3000筆以上集まり、4時間にわたって審理がおこなわれた。しかし委員8人中6人が反対し、「不採択にすべきもの」として扱われた。

 この様子について、ネットニュースサイト「ねとらぼ」が配信している。2018年12月15日配信『町田市「中学校給食」問題、2万3000超の署名を集めるも不採択に 議員からは「給食は手抜き」「お弁当を作りたい人の気持ちを尊重」』。

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1812/13/news120.html

 この内容が、ネット上で話題を呼んでいるという。

町田市での実態



 町田市では、選択制の配送弁当によるデリバリー給食で中学校給食を実施している。2005年にこの方式で開始されたものの、選択率は年々減少し、2017年度には17%前後まで落ち込んだ。

 選択率低迷の理由については、他の選択弁当方式で実施している自治体と同様「おかずが冷やされた状態で提供されておいしくない」「量の調整ができない」などとされている。また町田市では「デリバリー給食を注文することは『弁当を作ってもらえない家庭』という負のイメージがつき、生徒が注文しにくい」という声もあった。

 記事によると、選択制から全員給食に切り替えることについての疑問が集中したという。

 「全員給食は、お弁当を作りたいお母さんの気持ちを否定している」「弁当づくりは大変だが、親だから子どもに食べさせるのは当たり前。学校給食で栄養価というが、親が手抜きをしているのか?家できっちりを食事を作って食べさせれば栄養不足ということはない」などとする反対意見が出たという。

 いわゆる「愛情弁当論」に属する意見だと分析できる。

 また、自校調理方式などでの全員給食への移行には調理場の新設などが必要として、財源をどうするのかと不安視する立場からの反対意見もあった。

中学校給食をめぐる問題点が凝縮



 町田市での議論は、当該自治体の個別の問題にとどまらず、中学校給食をめぐる問題点を典型的に浮き彫りにしているような形にもなっている。

 いわゆる「愛情弁当論」については、使い古された時代遅れの論理ではある。

 またデリバリー給食の問題についても浮き彫りになっている。配送弁当方式では、「冷やされておいしくない」などの不満が出て、選択制のところでは選択率が低迷するのは全国的な傾向である。大阪市では橋下・維新市政のもとで、配送弁当方式を全員給食に強制移行させたことで不満が高まり問題になった。神奈川県大磯町では配送弁当方式で全員喫食にしたが、生徒からの不満が増大し、また大量の残食なども問題になり、一度撤回することになった。

 初期コストを減らすという名目で導入した「デリバリー給食」が、長期的にみれば「安物買いの銭失い」的な問題にもなっているということにもなる。

 食育の面からも、自校調理方式やそれに準じる方式での、中学校給食の全員喫食の導入が必要になっているのではないか。
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