大阪市教育委員会は12月25日の教育委員会会議で、市立小中学校の教科書採択地区について、「大阪都構想」なる大阪市の廃止・解体案と同じ区割りの4採択地区に分割する案を決定した。
採択地区を最終決定する大阪府教育委員会での審議を経て、2019年2月の大阪府教育委員会会議で正式に決まる見通し。2019年夏(2020年度以降使用)の小学校教科書採択より適用されることになる。
採択地区の細分化そのものは、「維新市政による採択地区統合→育鵬社教科書採択をごり押しする勢力による、教科書採択での不正発覚」の経緯から、求められていたものではある。しかし大阪市教委は維新市政での政治的動きを背景に、区割り細分化の要望を逆手にとって、区割り案でも維新の意向を忖度していることにもなる。
http://kyoukublog.wp.xdomain.jp/post-18418/
教科書採択地区細分化について、以下のような説明がおこなわれたという。
しかしこの理由は、「なぜこの4地区なのか」という合理的な説明にはならない。
「ブロックごとに現場の意見に沿った教科書の採択ができる」「採択された教科書について児童・生徒の状況に応じた研究ができる」なら、「全市1区統合以前の8採択地区制度を復活させる」「市内24行政区各区ごとに24採択地区を設定する」など、さらに細かい地域に分ける手法でも良いのではないかという疑問が出る。
「市教委事務局を4つに分ける検討をしている」というのは、2018年8月に吉村洋文大阪市長が突然言い出したものである。いわゆる「大阪都構想」、大阪市の廃止・解体の下準備として、教育委員会を細分化するものである。それを前提にしているということは、市長が政治的意図から突然ぶち上げたものを、首長部局からは独立した権限を持つ教育委員会としてもそのまま既成事実化しているということにもなる。
結果的に、「全市で教科書を統一することで教科書研究もスムーズになる」という、これまでの維新市政の意向で押しつけてきたことを、維新市政に忖度して否定しているという滑稽な形にもなっている。
政治の教育介入によって、しかも維新のご都合主義的な施策によって、振り回される事例となっている。
大阪維新の会創設者にして前大阪市長で、現在は「私人」気取りで政治からは一線を引いているふりをしているものの、実際には維新法律顧問でもあり、維新を裏で操ろうとするかのようなコメントを繰り返している橋下徹が、ツイッターでこのような発言をして正当化している。
橋下の発言は支離滅裂なものであり、論理的には何の整合性もない。
高校では学校採択であり、各学校ごとに異なる教科書を使用しても、また1つの学校の中ですらコースなどによって教科書を複数採用しても、何の支障もない。採択地区制度をとる小中学校でも、その学校で使用する教科書は選定したもの1種類だけであり、教員負担が増えるわけではない。「教科書の複数採用は、複数の教育委員会が必要だという証左であり、ゆえに大阪都構想が必要になる」とは、何の関係もないことをあたかも関係あるかのように印象づけて持ち出している詭弁でしかない。
橋下の発言からは、市教委がなぜこのような採択地区の区割りをしたのかという狙いが透けて見えるということだけである。
橋下の論理的整合性のない支離滅裂なこのツイッターでの発言は、まさに今の吉村・維新市政での「教育委員会ブロック化案」と「大阪都構想」の論理とも合致していることにもなる。
維新がいうところのいわゆる「大阪都構想」、大阪市の廃止・解体・分割策動では、政令指定都市として都道府県と同等の権限を持って独自に行えていた事業(教育分野だと教員の採用や加配など。他にも都市計画・道路管理など)が府に移管されてできなくなる、現大阪市域の財源が一度府に吸い上げられて新特別区に再分配される形になるので財政的にも現大阪市よりも予算が少なくなって不安定になるなどの弊害が指摘されている。小さな基礎自治体を作るふりをしながら、結局は府の中央集権的な制度になり、特別区の権限は一般市以下に抑え込まれるものとなっている。
また、そもそも「大阪都構想」自体、2015年5月17日の住民投票で明確に否決され、維新の側も「最終判断なので重く受け止める」と明言していたものである。しかし2015年11月の大阪府知事選挙・大阪市長選挙のW選挙で維新候補が勝利したことを口実に、なし崩し的に「都構想再挑戦」と言い出したものである。住民投票で明確に否定されているにもかかわらず、このような詐欺的手法で「都構想」を持ち出すこと自体が許されることではない。
採択地区細分化そのものは求められている。しかし「大阪都構想」と結びつけるような形での細分化は容認できない。
区割り設定は、教育や地域性などを考慮した合理的な設定でなければならない。今回の細分化案では、その合理性が何ら示されていないし、政治的意図を教育に持ち込んだと見なすべきものである。こういう手法は問題である。
2019年度以降の採択地区案
第1地区:此花区、港区、西淀川区、淀川区、東淀川区
第2地区:北区、都島区、福島区、東成区、旭区、城東区、鶴見区
第3地区:中央区、西区、大正区、浪速区、住之江区、住吉区、西成区
第4地区:天王寺区、生野区、阿倍野区、東住吉区、平野区
第1地区:此花区、港区、西淀川区、淀川区、東淀川区
第2地区:北区、都島区、福島区、東成区、旭区、城東区、鶴見区
第3地区:中央区、西区、大正区、浪速区、住之江区、住吉区、西成区
第4地区:天王寺区、生野区、阿倍野区、東住吉区、平野区
採択地区を最終決定する大阪府教育委員会での審議を経て、2019年2月の大阪府教育委員会会議で正式に決まる見通し。2019年夏(2020年度以降使用)の小学校教科書採択より適用されることになる。
背景に維新の教育介入
採択地区の細分化そのものは、「維新市政による採択地区統合→育鵬社教科書採択をごり押しする勢力による、教科書採択での不正発覚」の経緯から、求められていたものではある。しかし大阪市教委は維新市政での政治的動きを背景に、区割り細分化の要望を逆手にとって、区割り案でも維新の意向を忖度していることにもなる。
http://kyoukublog.wp.xdomain.jp/post-18418/
教科書採択地区細分化について、以下のような説明がおこなわれたという。
議案では、分割する理由について、市教委の事務局を分権型行政の観点から四つに分ける検討をしている▽ブロックごとに現場の意見に沿った教科書の採択ができる▽採択された教科書について児童・生徒の状況に応じた研究ができる、と説明した。
朝日新聞2018年12月26日『大阪)教科書採択地区、大阪市を4分割』 https://www.asahi.com/articles/ASLDT6364LDTPTIL01L.html
しかしこの理由は、「なぜこの4地区なのか」という合理的な説明にはならない。
「ブロックごとに現場の意見に沿った教科書の採択ができる」「採択された教科書について児童・生徒の状況に応じた研究ができる」なら、「全市1区統合以前の8採択地区制度を復活させる」「市内24行政区各区ごとに24採択地区を設定する」など、さらに細かい地域に分ける手法でも良いのではないかという疑問が出る。
「市教委事務局を4つに分ける検討をしている」というのは、2018年8月に吉村洋文大阪市長が突然言い出したものである。いわゆる「大阪都構想」、大阪市の廃止・解体の下準備として、教育委員会を細分化するものである。それを前提にしているということは、市長が政治的意図から突然ぶち上げたものを、首長部局からは独立した権限を持つ教育委員会としてもそのまま既成事実化しているということにもなる。
結果的に、「全市で教科書を統一することで教科書研究もスムーズになる」という、これまでの維新市政の意向で押しつけてきたことを、維新市政に忖度して否定しているという滑稽な形にもなっている。
政治の教育介入によって、しかも維新のご都合主義的な施策によって、振り回される事例となっている。
背後には「都構想」推進の政治的意図
大阪維新の会創設者にして前大阪市長で、現在は「私人」気取りで政治からは一線を引いているふりをしているものの、実際には維新法律顧問でもあり、維新を裏で操ろうとするかのようなコメントを繰り返している橋下徹が、ツイッターでこのような発言をして正当化している。
https://t.co/sBbo0C5Ghx
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) 2018年12月24日
結局、大阪市という行政単位が大きすぎるということ。一つの大阪市教育員会内で教科書を複数採用すると教員負担が増えるし、生徒評価も不公平になる。教科書の複数採用は、複数の教育委員会が必要だという証左であり、ゆえに大阪都構想が必要になる。
橋下の発言は支離滅裂なものであり、論理的には何の整合性もない。
高校では学校採択であり、各学校ごとに異なる教科書を使用しても、また1つの学校の中ですらコースなどによって教科書を複数採用しても、何の支障もない。採択地区制度をとる小中学校でも、その学校で使用する教科書は選定したもの1種類だけであり、教員負担が増えるわけではない。「教科書の複数採用は、複数の教育委員会が必要だという証左であり、ゆえに大阪都構想が必要になる」とは、何の関係もないことをあたかも関係あるかのように印象づけて持ち出している詭弁でしかない。
橋下の発言からは、市教委がなぜこのような採択地区の区割りをしたのかという狙いが透けて見えるということだけである。
橋下の論理的整合性のない支離滅裂なこのツイッターでの発言は、まさに今の吉村・維新市政での「教育委員会ブロック化案」と「大阪都構想」の論理とも合致していることにもなる。
維新がいうところのいわゆる「大阪都構想」、大阪市の廃止・解体・分割策動では、政令指定都市として都道府県と同等の権限を持って独自に行えていた事業(教育分野だと教員の採用や加配など。他にも都市計画・道路管理など)が府に移管されてできなくなる、現大阪市域の財源が一度府に吸い上げられて新特別区に再分配される形になるので財政的にも現大阪市よりも予算が少なくなって不安定になるなどの弊害が指摘されている。小さな基礎自治体を作るふりをしながら、結局は府の中央集権的な制度になり、特別区の権限は一般市以下に抑え込まれるものとなっている。
また、そもそも「大阪都構想」自体、2015年5月17日の住民投票で明確に否決され、維新の側も「最終判断なので重く受け止める」と明言していたものである。しかし2015年11月の大阪府知事選挙・大阪市長選挙のW選挙で維新候補が勝利したことを口実に、なし崩し的に「都構想再挑戦」と言い出したものである。住民投票で明確に否定されているにもかかわらず、このような詐欺的手法で「都構想」を持ち出すこと自体が許されることではない。
採択地区細分化は合理的な区割りで
採択地区細分化そのものは求められている。しかし「大阪都構想」と結びつけるような形での細分化は容認できない。
区割り設定は、教育や地域性などを考慮した合理的な設定でなければならない。今回の細分化案では、その合理性が何ら示されていないし、政治的意図を教育に持ち込んだと見なすべきものである。こういう手法は問題である。